安全な住まいとは?
2025年の法改正で縮小される「四号特例」。 この改正により”住まいの安全”はどう変わるのか?
本コラムでは、建築基準法の歴史を振り返りながら、住まいの安心と安全をさまざまな角度から考えていきます。
「安心とは、安全とは。」 皆さんも一緒に考えてみませんか?
■建物にかかわる法律は「建築基準法」
住宅に限らず、「建物」は建築基準法の第1条に次のように書かれています。
「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、
国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする」
建物造りにかかわる方々には、この法律の存在を知っていただくことが大切です。
■より安全な住宅を造るために
2025年(令和7年)4月1日から着工する住宅は、「令和4年6月17日公布」の改正建築基準法に適合する必要があります。
四号特例が縮小(令和7年4月1日から着工する住宅に適用)され、住まいは「より安全」になります。
法改正により縮小された「四号特例」とは
- 四号建築物とは、建築基準法第6条第1項の一号~三号に該当しない建築物(比較的小規模な建築物)のこと。
- 特例とは、法6条の4に基づき「建築士が設計を行う四号建築物においては、確認申請時に一定の規定が省略」される制度のこと。
検査(審査)も同様に、建築士である工事監理者が設計図書通りに施工されていることを確認した場合、一定の規定の審査が省略されます。
- 一部の規定の確認や審査が省略される場合でも、規定の確認と審査が免除されるわけではなく、規定を守り「法に適合」すること。
これらを「四号特例」と言います。
四号を「特例」にせざるを得なかった背景
特例の対象となった建物は、小規模な木造住宅です。
かつては、2階建て以下の木造住宅の多くにおいて建築士が関与することは少なく、大工さんが「絵図板」(えずいた:土台伏図や梁伏図を清書した板)を
作成し、これをもとに大工さんや工務店が経験と勘で建てるのが一般的でした。
戸建住宅の場合は万が一問題があっても「小さなもの」「小規模なもの」であるため、社会に与える影響は小さいと考えられたことが
特例の対象となった理由のひとつです。
他には、1999年(平成11年)頃に「建築確認申請の民間開放を軸とした改正建築基準法」が施行され、その前哨戦ともいえる時期に
「建築確認審査業務」の合理化が必要になったことが挙げられます。
景気上昇により住宅建築棟数が増え、建築確認審査にかかわる行政職員の人材不足や業務過多が問題視され、処理能力を大幅に増強する必要が
生じたからです。
それらの解決策として「確認申請」がスムーズに進められるように、他の建物と比べても審査が簡単で必要性が低いとされていた
「四号建築物」に対して、確認審査の内容を一部省略化することが決定されました。
これが四号特例制度の始まりです。
結果、審査にかかる負担が格段に軽減され、期間も短縮することができました。
>>次回は「特例がもたらした弊害について」です。お楽しみに